文学部SDGs実行宣言
2020.7.31お知らせ
文学部は2019年11月に文学部SDGs実行宣言を行いました。
文学部SDGs実行宣言
目標「読むことの喜びを、より多くの人に」
平和的な発展と持続可能な社会の実現のためには、自然科学の発展に期待するだけではなく、近代世界システムを支えてきた権力体、暴力や欲望の連鎖を批判的に考察するだけでもなく、私たち一人一人の価値観、人生観、社会観、自然観、成長観を根本から見つめなおし、また見つめなおすことに喜びを見出す必要があるように思われます。個人の生き方や考え方の再検討は、人類の叡智が創り出してきた様々な制作物(ここでは主に書物とします)に敬意を払い、それらを享受し「読む」行為の中で実践することができます。
物語世界の中を生きる他者の人生を想像し、自己の価値観とは異なる価値観の内面化を試みる。主体的に読むという行為に参画して対象物をテクストとして検証し、検証したのちにまた読みかえす。多様で多層であった「近代」を、多元的に捉えて対象化するために、地域社会の特性を文学文化との関係の中で明らかにする。そこでの成果を、まずは目の前の学生に、そして市民に、より多くの人に伝える。他方で、諸テクストを「読む」ことを通して学生や市民が発する声にも耳を傾け、テクストを通して対話する。
例えば古典文学を読む立場からは、「あはれ」や「をかし」、「なりゆく」など、制度や時代相の変遷を超えて通底する価値観や自然観、人生観を捉え、近代との連続と断絶とを見極めつつ持続可能な社会を想うことができます。近代文学を読む立場からは、近代における内発性を重視した夏目漱石の「現代日本の開化」をはじめとするテクスト中に同時代としての近代(化)との葛藤や反措定を見出し、相対化されてきた近代の世界観、人生観などを把握した上で近代の終わりと来るべき持続可能な社会とを想うことができます。
これまでおこなってきたこうした諸活動が、持続可能な社会の実現への一助となることが私たちの願いです。ここに「読むことの喜びを、より多くの人に」という目標を掲げて教育と研究と創作とを実践的に行うことをここに宣言します。