学生によるSDGsの取り組み~生まれ育った栃木県矢板市で計画審議会委員として活動 矢板駅の設計を考案し、市長や県職員の前で発表する~

2022.3.30学生の取り組み

取り組みについて

栃木県矢板市審議会委員として活動している工学部建築デザイン学科4年生田中 佑朋さんの取り組みを紹介します。

田中さんは、2022年3月に行われた矢板市長と栃木県職員が出席するタウンミーティングで、卒業研究として自身が考案したJR宇都宮線矢板駅の設計について発表しました。

SDGsと関連する田中さんが考えた「矢板駅の設計」とは?

 

タウンミーティングで矢板駅の発表を行う田中さんの様子

 

田中さんが工学部建築デザイン学科に進学した理由を教えてください

一番大きな理由は両親がどちらも建築学科を卒業しており、幼い頃から建築や建物に触れられる機会が多くあったことです。

私の母が二級建築士を持っており、矢板市で家具屋を営んでいるため、母がよく家具のデッサンや図面を描いているのを隣でよく見ていました。

また矢板市にはもう1つ片岡駅があり、私が中学3年生の時、建て替えをして新しくなりました。

片岡駅がとても素敵な駅に変わったのを見て、そこで設計という仕事を初めて知りました。その時から設計の仕事に興味を持ち始め、建築を学ぶことができる大学に進学しました。

 

田中さんが大好きな矢板市の魅力について

私の実家が家具屋をしているため、街の人との関わりが幼いことからよくありました。

小さい街ならではのまとまりや、人がやさしく話しやすいところだと思います。あと市長とも気軽に話せるのも他の街にない魅力だと思います。

 

田中さんが活動している「矢板市審議会委員」を始めたきっかけと活動内容について

■ 始めた経緯

栃木県矢板市で生まれ、大学で上京するまでの18年間矢板市で育ちました。

矢板市のことが大好きで、よりよい街にしていくために自分が学んでいる建築のことや、地元で育った若者としての意見を活かせないかと思い2年前に応募し、2年間ボランティアとして矢板市計画審議会委員(以下、委員)を務めました。

 

■ 活動内容

大学3年生から4年生まで委員として活動しました。年1~2回ある集まりに参加し、市長含め矢板市役所の都市整備課と意見交換をするのが主な活動内容です。

小さな市であるため、行政機関の方と近い距離感でどのような街にしていきたいのか、どのような施設が必要なのか等のまちづくりについて話し合います。

委員自体、年配の方が多いです。建築を学ぶ大学生であり、かつ若者として、自由な意見を伝えることを心掛けて活動していました。

 

■ 実際やってみてどうだったか

コロナ禍の影響により、大学3年生の時に自宅に戻ったことから、遠目からみた矢板市ではなく、地元に戻って矢板市を見つめ直して活動できてよかったと感じています。

また委員としての経験を通して、街づくりで重要となる駅をテーマに卒業研究につなげることもできました。

 

卒業研究で考案した矢板駅の設計について

■ なぜ駅の設計をしたのか

大好きな矢板市のことを研究して地元に少しでも貢献したかったこと、小さい頃から駅が好きだったからです。

中学校3年生の職業体験で、地元企業以外にどこでも自分が行ってみたい企業に行くことができたため、ちょうどその時期にリニューアルした「片岡駅を設計した人に会ってみたい」という思いから、新宿にあるJR東日本建築設計職業体験として選びました。片岡駅を設計した社員の方にも会い、駅の設計に関する話聞いたことから駅に対する気持ちが芽生え、駅に興味を持っていきました。

 

田中さんが中学3年生の時、リニューアルされた片岡駅

 

矢板駅の現在の姿(1)

 

矢板駅の現在の姿(2)

 

矢板駅の設計に向けた調査について

1971年からの地図を集め、約10年ごとに1980年、1990年、2000年、2009年の地図を比較し、矢板駅周辺にある商店(生活用品・雑貨等)、飲食店、企業・工場、病院・保健所等、旅館、学習塾、アミューズメント施設(遊ぶ場所)の変遷を把握しました。

また実際に矢板駅を利用している人に、矢板駅や矢板市についてどのようなイメージや要望をもっているのかをアンケート調査やヒアリングを行い、調査結果からどのような場所が市民から求められているかを抽出し、それらを設計として形に落としていく作業を行いました。

 

 

 

今回、設計した矢板駅は矢板市にとって必要な用途をあてはめつつ、今後を見据えた新しい駅や鉄道の在り方を提案しました。

 

 

設計(1)駅の中にあるコミュニティスペース

矢板駅は高校生の利用が多い駅のため、高校生にどのような場所が必要なのかも考えました。例えば高校生のための学習スペースや街の建築管理事務所(都市整備課のようなもの)、コミュニティスペースが駅の中にあれば市民同士だけでなく、行政機関として街を支える人と高校生がもっとつながりや交流を持てるのではないかと考えました。

 

 

また現在、矢板市の文化会館が閉館しているため、文化的活動を披露するステージや矢板市の特産物に触れられるようなスペースを駅の中に設置しました。

 

 

設計(2)SDGsを踏まえた設計

設計した矢板駅は3×9mのコンテナ型駅で構成されます。コンテナといっても、今使われている貨物列車の固いイメージのコンテナではなく、用途によって自由に壁やガラス壁に入れ替え垂れるようなコンテナです。

コンテナ型の駅は貨物列車の荷台に乗せれば線路が繋がっている駅にどこでも空間自体を輸送することができ、トラックの荷台に乗せれば街中に移動して活用することもできます。

 

 

矢板駅周辺には貨物用のコンテナが置かれている

 

例えば街の中にコンテナ型の駅を移動した際は、街の図書館、ギャラリー、ステージとしての新しい使い方ができます。一から建てて、老朽化すると建て直すよりも資源やコストを抑えて、市民のニーズに合ったすみやすいまちづくりができます。

 

 

またコンテナの屋根にはソーラーパネルを設置し、エネルギーを調達します。また電車が駅に停車するときに発電される電力を駅に活用することも想定しています。

 

今後、設計を通してSDGsに関して、取り組んでいきたいことを教えてください。

通常、建物を建てる場合は新しい資源を持ってこないといけませんが、そうではなく街にあるものや今まで使われていたものを再利用する等、資源の面にも配慮した設計をしたいと思っています。

 

 

 

また今後、設計者としてつくることはもちろんですが、街に一つ建物を建てるのではなく、街に分割して派生していけるようなモノ、簡単に変化や移動できるモノによって持続可能なまちづくりができる設計者を目指して頑張りたいと思います。

 

田中さんと齋藤矢板市長

 

※本取材は2022年3月に実施しました

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