コロナ禍で進める国際共修プロジェクト~オンラインツールを活用し、3大学合同でSDGsをテーマにしたWEB雑誌作成に取り組む~

2021.10.18

グローバル学部・言語文化研究科日本語コミュニケーション学科

  • グローバル学部 日本語コミュニケーション学科

    神吉宇一

取り組みについて

この取り組みは、グローバル学部日本語コミュニケーション学科の神吉宇一准教授とゼミ学生3名が、関西大学の学生6名とスミス大学(アメリカ・マサチューセッツ州)の学生10名と実施した日米の大学における「テレコラボプロジェクト」の2年目の報告です。

本プロジェクトは、2019年度からSDGsをテーマにしたWeb雑誌作成を目的に武蔵野大学とスミス大学で取り組みを行なった後、その振り返りを通して改善を図り、2020年度に関西大学も加えた3大学で実施したものです。

以前の取り組み内容についてはこち

 

2019年の成果(武蔵野大学とスミス大学の取り組み)

本プロジェクトは2019年の春に、スミス大学で日本語の授業を担当している熊谷由理先生、武蔵野大学グローバル学部日本語コミュニケーション学科教員の神吉先生が双方の学生の学びになるような取り組みができないか検討したことがきっかけで、2019年度の9月〜12月に取り組んだのが最初のものでした。

当時、新型コロナウイルスはまだ流行していませんでしたが、神吉ゼミでは2018年度からゼミ活動の一部をZoomで行っていたこともあり、オンラインツールを用いて活動すること自体は難しいことではありませんでした。ただ、海外の大学との中長期的なオンラインコラボのプロジェクトは初めてだったので、いろいろと試行錯誤を行いながら実施しました。

以下の3点が、2019年度の活動の軸でした。

1.両大学の学生が混在したグループを作ってグループワークを行うこと

2.全グループ共通したテーマをもって取り組むこと

3.グループワークの成果として具体的な成果物を作成すること

そこで、両大学の学生混在で3~4名のグループ(各グループに本学学生1名)を構成し、多様な学生の共通課題として扱いやすいSDGsをテーマにしたWeb雑誌の作成に取り組みました。

 

2019年度の取り組みを通して見えてきた課題は以下の4点でした。

①グルーピングの人数バランス

スミス大学と武蔵野大学の参加学生比の違いにより、意見交換や使用言語の選択場面等で武蔵野大学の学生が自分たちの主張を通しきれなかった

②オンラインとオフラインの情報ギャップ

スミス大学は対面授業の教室からオンラインで接続、武蔵野大学は自宅から個別にオンラインで接続したことにより、双方に情報のギャップがあり、特に対面の教室のやりとりにオンライン側がついていけないという課題があった

 ③英語理解に関する個人差

武蔵野大学の一部の学生が、英語で進められた活動に対して十分に参加できない場面が発生した(活動は日英の両言語を使うことになっていたが、スミス大学のテクニカルスタッフによる著作権保護・画像引用等に関するワークショップはすべて英語で行われた)

 ④日本語・英語以外の言語の使用

学生の中に中国語話者が一定数おり、本学学生も中国語を全員履修していたことから、今後はプロジェクト全体でもっと積極的に日英語以外の言語使用を働きかけていいのではないかと考えた

上記①~④の課題を踏まえ、2020年度のプロジェクトデザインを行いました。

 

2020年度の取り組み内容について                               

2020年度は新たに関西大学の嶋津百代先生とも協力し、計3大学19名の学生でプロジェクトを進めることになりました。昨年度の課題であった4点のうちの①〜③については、新たな大学の参加による日本側の学生数の増加(①)、新型コロナの影響による全面的なオンライン授業の実施(②)、英語のレクチャーやワークショップはオンデマンド型動画に字幕をつけるという対応(③)で解決しました。④のより多様な言語使用については、本プロジェクトの重要な柱となる部分であるため、改めて関係する教員たちで考え方を整理し、複数の言語を使って活動することを2019年度以上に推奨しました。

 本プロジェクトは、複数の言語を使って活動をしますが、それは単に外国語を習得するためではありません。言語・文化の異なるメンバーでチームを組んで作業を進めていくにあたり、どのような言語を選択したらよりよく活動ができるか、また各自が自分らしく活動に参加することができるかを経験的に学ぶこと、複数の言語話者でのコミュニケーションのあり方について考えることを目的としています。

2010年代以降、外国語教育研究や外国語コミュニケーション研究では、“translanguaging”という考え方が注目されるようになりました。translanguagingの考え方では、複数言語の話者が「日本語」「英語」「中国語」といったそれぞれ異なった言語体系を持っていてそれを使い分けているわけではなく、「その人なりの一つの言語体系」を持っていると考えます。そして、その人がコミュニケーションをする際に、自分が使える言語的資源を自律的に選択していく行為を指します。本プロジェクトも、このtranslanguagingの考え方を理論的な基盤としており、学生たちが都度のコミュニケーションを円滑に進めるために言語資源を自由に選択していく場として設計しました。

 本プロジェクトの成果物(2019年度・2020年度)はこちらで公開しています。

2020年度は、5つの雑誌を作成しました。

 

2020年度作成雑誌

◆『平等の機会』

SDGsの目標:「10.人や国の不平等をなくそう」

内容:中国、アメリカ、日本それぞれの社会における格差について

 

 

 

 

◆『気候変動攻略本』

SDGsの目標:「13.気候変動に具体的な対策を」

内容:世界各地での気候変動の現状とその解決策について

 

 

 

◆『コロナと教育』

SDGsの目標:「4.質の高い教育をみんなに」

内容:新型コロナウイルスによる世界の教育や心に対する影響について

 

 

 

 

◆『LOVE IS LOVE

SDGsの目標:「5.ジェンダー平等を実現しよう」

内容:LGBTQ+や同性婚に対する日米の社会的状況の比較について

 

 

 

 

 

◆『ジェンダー平等の形』

SDGsの目標:「5.ジェンダー平等を実現しよう」

内容:社会におけるジェンダー格差および国際比較について

 

 

 

 

 

成果物は日本語で書かれたものが多いですが、『コロナと教育』は日英の対訳型になっています。また『LOVE IS LOVE』は日英語を「適宜・必要に応じて」混在させています。参考文献欄を見ると、資料収集では英語、日本語に加え、中国語も用いてさまざまな資料にアクセスをしたことがわかります。

 

『コロナと教育』は対訳型で記載

 

『LOVE IS LOVE』は日英語を必要に応じて記載

 

本プロジェクトを通して、学生たちは「扱うテーマ」「活動の進め方」「使用言語」という三つの主体的な選択を行いました。3大学の教員たちは、活動の進め方を学生たちの自律性・主体的な取り組みに委ねつつ、各グループの進捗状況に応じて関連資料を紹介したり、活動についてアドバイスを行ったりしました。

 

本取り組みを通して実感したこと

グローバルな社会において、外国語を学び使うということはどういうことなのか、大学における外国語教育は何を目指すものなのかということを改めて考えました。例えば、英語に関する知識やスキルを習得し、英語が正しく適切に使えるようになることは、もちろんこれからの社会を生きていく学生たちにとって基本的な素養だと思います。しかし英語ができればグローバルに活躍ができるわけではありません。世界は多様です。日本に住んで日本で仕事をするにしても、今後は、文化や言語の異なる人たちとチームを組んで様々なことに取り組み機会は増えるはずです。そのときに、どのようなコミュニケーションを行ったらよいのか、コミュニケーションを通してどのようにチームを作り、協働的な作業を行ったらよいのかを考えていくことが大切だと思います。今回のプロジェクトは、グローバルな社会で活躍していく学生たちにとって貴重な経験と学びの場になったと思います。

大学は「専門学校」「語学学校」ではありません。外国語教育を単なる言語の習得の場として考えるのではなく、学生たちが自分たちの言語使用を自分たちなりに主体的に考えていき、多様なことばの使用を通してさまざまなことを学んでいく、そんな場にできるといいなと改めて感じました。

 translanguagingについては、以下の文献にそれぞれ詳しく記載されています。

●Li Wei(2018)Translanguaging as a Practical Theory of Language, Applied Linguistics, Vol.39(1), 9-30. 

Garcia, Ofelia and Otheguy, Richardo(2020)Plurilingualism and translanguaging: commonalities and divergences, Intenational Journal of Bilingual Education and Bilingualism, 23(1),17-35.

 

 

担当者

  • グローバル学部 日本語コミュニケーション学科

    准教授

    神吉宇一

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